[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ふわりと何かが香った。よく嗅ぐ気がするけれど、なんかの花だっけ・・・?
そんなことを考えながら、灯里は一人街中を歩く。
いつもなら一緒のアリア社長は、今日は猫好きのお客様の希望で、アリシアと一緒。
アリスは学校で、藍華は晃さんの用事の手伝いに駆り出されている。
事務の仕事は早々に終わり、一人で練習でもしようと思ったが買わなければいけないものがあるのを思い出したのだ。
そして散歩がてら買い物に出かけ、今はその帰り道と言うわけだ。
また、ふわりと香りがした。
その香りに誘われるように小道を歩いていく。
角を曲がると、その道は橙色に染まっていた。
「うわぁ・・・!」
思わず感嘆の声を上げる灯里は、橙に染まった道に釘付けで、後ろから忍び寄る人物に気づかなかった。
橙色は、よく見ると小さな花のようだった。
「まるで、お花が絨毯を敷いてここに来る人を歓迎しているよう・・・」
「恥ずかしい台詞禁止だもみ子よ」
そういいながら、灯里の髪の毛を引っ張ったのは
「うむ!今日も立派なもみ上げだな!」
「暁さん・・・私はもみ子じゃないですし、髪を引っ張るの禁止です~・・」
言っても無駄だと解っていながらも言わずには居られない。
二人の間では既にこのやりとりは挨拶も同然だからだ。
「兄貴と待ち合わせをしていてな・・・まだしばらく時間があるのでその辺を歩いていたらお前を見かけてな。
是非その立派なもみ上げを引っ張らねばと思い、追いかけたんだ。金木犀のいい香りがする小道だな」
何か変な使命感に燃えているなと思ったが、最後の方の言葉が自分の中で引っかかった。
金木犀。
そうだ、この香りは確かに──
「そうです、やっと思い出しました!このオレンジの小さな花と香りは金木犀ですね。ずっと名前が出てこなかったんですよー暁さん、ありがとうございます」
そう言って両脇の塀を見る。少し低い塀からオレンジの小さな花を大量につけた木が見えた。
「本当に、いい香りですね」
「ああ、だな」
暁はふと思ったことを実行しようと、悪いと思いつつ金木犀の小枝を一本折った。
そして灯里に向かってぶっきらぼうに「やる」と言って小枝を渡した。
手元で香るそれは、遠目から見たときよりも綺麗な橙で、強い香りを放っていた。
「わぁ・・・ありがとうございます、暁さん!」
お礼を言いながら眩しいほどの笑顔を見せる灯里。
その笑顔に見惚れながら、金木犀の小さくて可愛らしい花と良い香りがお前に似合うと思って渡しただなんて言えない暁だった。
「あら・・・この香り、金木犀ね」
「ぷいにゅ~」
「あ、アリシアさん、アリア社長。お帰りなさい」
夕暮れ時、本日の仕事を終えたアリシアとアリア社長が戻ってきた。
「あら、どうしたのそんな嬉しそうな顔をして?」
「ふふ、なんでもないですよ♪」
暁に貰った金木犀の枝を見るたびに、何故だかとても優しい気持ちに、幸せになって微笑む灯里だった。
そんな気持ちを『恋』と呼ぶにはまだ早く。
彼女の気持ちが『恋』になるのはいつのことやら。
後書きと言う名の言い訳
金木犀の香りが大好きです。
超時期ネタですね。
ネオヴェネツィアに金木犀があるかはわかりませんが・・・あったら素敵ですよね。
灯里には金木犀って結構似合う気がします。というか花が似合うんですよね彼女。
灯里視点?は難しい・・・;
金木犀の花言葉を調べたらこうでました
*花言葉
謙虚・謙遜・真実・真実の愛情・初恋・気高い人・あなたは高潔です・陶酔
多いなー
・・・・「真実の愛情」って暁さんっ!(笑